6. 「柿其渓谷の無名滝」
 
牛ケ滝

柿其渓谷は木曽130河川の中で随一の美渓であろう。
隣接する阿寺渓谷も美渓であるが、人間を寄せ付けないV字渓谷の様相は柿其渓谷に軍配があがる。

霧ケ滝

牛ヶ滝、ねじだる、霧ヶ滝、虹ノ滝、箱淵、雷の滝、銚子滝・・・などの見所が満載であるが、川に降りれるのは牛ヶ滝を見学できる遊歩道付きの恋路橋から黒淵までと、柿其渓谷右岸の林道を徒歩で1〜2時間歩いた上流のごく一部の場所だけであり、中流域はゴルジュ帯や断崖絶壁のV字谷で険岨、平水でも遡行不可能である。
過去には無理をした釣り人が遭難するなど、一部のロッククライマーか沢登り屋しか遡行できない難所が多い。

実際、「ねじだる(曲りくねった滝状の流れ)」を林道から見ると右写真の高さである。焦点距離70ミリほどで撮影しているので、実際はもっと高低差がある。東京の高層ビルより楽に高いであろう。

そんな柿其渓谷だが「地元の人ぞ知る、降りれる場所がある。」と聞いた。その場所をどうしても知りたくて知人と撮影がてら林道を歩くことにした。
1時間半ほど歩いたが、簡単に降りれる場所は誰もが知る上流の数箇所だけ。仕方ないので引き返し、途中ある場所で休憩をした。
歩き疲れた身体を休め座っていると、まるで誰かがここから降りた様な道が見えてきた。眼の錯覚か、疲れてるのか。しかし、何かに誘われる様にその方向に歩く。



一段下がって降りてみて驚いた。
真新しい木が打ってあり階段が形成されている。
まだできて間もないと思われる踏み後をひた走る。
「これって、昔は地元の人ぞ知る場所だったけど、観光の為に道と階段を作ってる最中じゃないのか?」
どう見てもそんな光景なのである。真新しい看板までできている。
どんどん獣道の様な道を下って林の中を突き進むと「ねじだる」まで降りてしまった。「こ・・・コレがねじだるか・・・・。」
目の前のゴルジュを見た二人は言葉なく自然の大きさに感動する。


慌てて降りてきたので帰りはゆっくり森の中の景色を見ながら登っていくと、柿其渓谷左岸に小さな滝を発見した。(右写真の左側に写る小さな滝。)
この滝はここまで降りないと見れない。
名も無い滝と思われるが、ここが観光の為に整備されれば名前が付くのであろうか。
私は滝の名前などどうでも良く、知らなかった木曽の風景を1つクリアできたことに感動を覚えていた。


昭和三十年代のオールドタイマーな釣り人はきっとこの滝の存在を知っていたであろう。滝の向こうはどうなっているのか・・・いつかのぞいてみたい。

2004年 初記



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